地方移住

移住者と地元、すれ違いを減らす「出会わせる仕組み」|美瑛町は月2回のサロン、伊江村は移住コーディネーターが集落へ

●増加する都会から地方への移住と課題

都会から地方へ移り住もうとする人が、増え続けています。ただ、迎える側と、移り住む側。その間には、すれ違いもあります。すれ違いは、移り住む人だけの問題なのでしょうか。迎える側の本音と、両者を出会わせる仕組みを見ていきます。

●歓迎は半数、抵抗は1人|50人に聞いた迎える側の本音

公益社団法人ふるさと回帰・移住交流推進機構によると、2025年に寄せられた移住相談は73,003件。前の年の61,720件から18.3%増え、5年続けて過去最高となりました。
出典「【2025年】移住希望地ランキング公開」

そんな移住について、webメディア「ニッポンモンダイ」は、「都市部からの移住者受け入れについて」というアンケートを実施。人口100万人以上の都市圏から、転勤や進学以外の理由で移住してきた人が身近にいる50人に、移住者をどう受け止めたかを聞きました。

移住者が来たと聞いたときの気持ちは、「地域に新しい人が増えるのは嬉しい」が38%、「地域が活性化するのではと期待」が12%。合わせて半数が、移住者を歓迎していました。「特に何も感じなかった」は20%。「地域の人とうまく付き合えるか気になった」(16%)、「地元の文化や習慣になじめるか気になった」(12%)と、心配した人もいますが、「都会の価値観を持ち込まれることに抵抗があった」と答えたのは、50人のうち1人だけでした。

●移住者が暮らし始めて見えてくるズレ|最も多かったのは「近所付き合いの距離感」

ただ、暮らし始めると、ズレも見えてきます。交流が始まってから違いを感じた点で最も多かったのは、「近所付き合いの距離感」で40%。「特に違いを感じたことはない」は22%でした。
では、迎える側はどんな人に来てほしいのか。複数回答で最も多かったのは「地域のルールや習慣を尊重する人」の52%。「地元の人と日常的にコミュニケーションを取る人」が42%、「地域のために自分のできることをする人」が32%、「地域の行事や活動に参加する人」が30%と続きました。一方で、「移住者だからと特別なことをする必要はない」も26%ありました。

●移り住んだ側も「壁」を感じている|北海道の調査から

壁を感じているのは、迎える側だけではありません。北海道新聞社が2026年6月にまとめた「リサーチ北海道 移住・定住に関する意識調査」のサマリーでは、小規模な市町村に移り住んだ人の25.8%が、課題として「地元住民との壁を感じる」を挙げました。同じ調査で、小規模な市町村の住民の65.8%は「地域の人口が増えること自体が嬉しい」と答えています。迎える側は人が増えることを喜び、移り住んだ側は壁を感じている。サマリーは、自治体の施策のゴールを移住者の数ではなく定着に置き、地域との接点も含めて暮らしを支える「定着支援」へ転換する必要があると指摘しています。

●出会わせる機会づくりを続ける市町村は3割程度

では、移住者と地元の人を出会わせる取り組みは、どれほどあるのでしょうか。一般社団法人全国過疎地域連盟「過疎地域の移住受入施策・体制に関する調査研究 報告書(2024年3月)」の市町村アンケートでは、「地域住民に移住者を紹介する機会の提供」を「現在実施しており、今後も継続したい」と答えた市町村は32.1%、「地域住民と移住者が交流する機会の提供」について同様に回答した市町村は25.8%にとどまりました。移住を呼び込む施策に比べ、迎える側の場づくりは、まだ多くありません。

●美瑛町は月2回のサロン|移住者と町民が「気軽に話せる場」をつくる

北海道の美瑛町では、2021年に「丘のまちびえい移住定住促進協議会」が設立されました。町のホームページによると、移住してきた人と地元の町民を合わせて約120人が会員登録しており(令和7年現在)、毎月第2水曜の昼と第3金曜の夕方、月に2回サロンを開いています。事務局は町役場が務めています。

全国過疎地域連盟の報告書(2024年3月)は、この協議会の狙いを、移住してきた人と地元の人が気軽に話せる場をつくることだと紹介しています。人口を増やすことよりも、町全体の関係が変わっていくことを目指し、ゆるやかに参加できるネットワークとして運営されている、とも記しています。

●伊江村は移住コーディネーターが集落へ|「どんな人に来てほしいか」を住民と考える

また、同報告書によると、沖縄県の伊江村では、移住コーディネーターが村内の集落を回り、村にどんな移住者が必要かを調べたとのこと。そのうえで住民とワークショップを開き、地域を保っていくのにどんな人が必要かについて、理解を深めていました。

移住者を「迎えるかどうか」ではなく、「どんな人に来てほしいか」を、迎える側が自分たちで言葉にする。50人調査で多くの人が移住者に「ルールや習慣の尊重」を求めていたことを思えば、その中身を先に住民どうしで話し合っておくことは、すれ違いを減らす近道にもなりそうです。

報告書ではほかにも、京都府南丹市のNPO法人が先輩移住者の経験をまとめた冊子を後輩移住者に配るなど、移住者と地域をつなぐ取り組みが紹介されています。

●秋田に店ごと移ったHEY!たくちゃんの心構え「居させて頂いている」

仕組みと並んで大切なのが、移り住む側の姿勢です。ものまね芸人で料理人のHEY!たくちゃんは、2025年4月、東京・浅草で営んでいたラーメン店を秋田県大仙市へ移し、自身も移り住みました。開店当初、地元の客からは「すぐ終わる」「まだボーナスタイム」といった言葉を何度もかけられたといいます。それでも、いじめではなく、これまで閉じていった店を見てきた地域の人の気質だと受け止め、そう言いながらも店には来てくれると受け流しました。

ニッポンモンダイの取材に、たくちゃんは「居させて頂いている」という思いを忘れないと話します。そして、「住み始めたらその地域の住民」であり、市や町に「どんな貢献ができるか」を考えるとも語ります。開店から約1年が経つと、からかう声は消え、店は地元の店として根づいていきました。

●橋渡しの人を見つけ、育てる|残る課題

報告書では、移住施策を移住者の数だけで測るのではなく、移住者と住民が暮らしのなかで関係を築けるかを重視すべきだとしています。そのために、両者をつなぐ橋渡しの人を見つけて育てること、そして支える民間団体の負担が重くなりすぎないよう、自治体が支えることを求めています。移り住む人の姿勢と、出会わせる仕組み。その両方がそろったとき、すれ違いは減らせるのかもしれません。

●歓迎は、している|足りないのは、出会わせる仕組み

身近に移住者がいる50人のうち、半数は移住者を歓迎していました。違いを感じた点で最も多かったのは、拒絶ではなく、近所付き合いの距離感でした。だとすれば、距離は、出会う場で縮められるはずです。「歓迎は、している。足りないのは、出会わせる仕組み」なのかもしれません。

※動画内にはAIで生成したイメージ映像およびナレーションを使用しています。

【調査概要】
調査名:移住者受け入れについてのアンケート
調査対象:「人口百万人以上の都市圏から、転勤・進学以外の理由で移住してきた人」が周囲にいるという男女50人
調査方法:インターネット調査(Freeasy)
調査時期:2026年8月25日
調査主体:ニッポンモンダイ
出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000141.000086409.html

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